ドラキュラ

シネマの宝石学
―洗練された大人のおとぎ話29

宝石の魂をもったドラキュラ「ドラキュラとダイアモンドの涙」

秋の夜長、ゴシック・ホラーに身をゆだねながら、薫り高きホットウィスキーを楽しむとしたら、かなり上等な時間のすごし方といえるのではないだろうか。コーヒーやホットワインでないのは、この映画の主要な舞台が、英国ロンドンだから。しかも、原作者のブラム・ストーカーは、アイリッシュウィスキーの本場、アイルランドの生まれである。

序章 絶望

時は、15世紀。トランシルヴァニア―現在はルーマニアの西部にあたる山に囲まれた緑豊かな地域―にそびえる美々しいお城に、思慮深く、たくましき城主が住んでいた。その名は、ヴラドⅣ世。武勇の誉れ高き彼は、神のため、異教の徒であるオスマン帝国軍と戦い、数多くの敵兵を串刺しにしたことから、ヴラド・ツェペシェ(ヴラド串刺し公)と呼ばれ、恐れられていた。 串刺しされた兵士たちが累々と荒野に並ぶ、

この映像は、影絵のように印象的だ。戦いに勝ち、意気揚々と故国に戻ったそのとき、待っていたのは、最愛の妃、エリザベータの亡骸だった。夫の死を告げる、偽の手紙に衝撃を受け、自ら深い川に身を投げて死んだのだ。
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岩田裕子