瘋癲老人日記

シネマの宝石学―洗練された大人のおとぎ話

猫目石と女の関係

「瘋癲老人日記」

人間よりえらいと思ってる。所有されるのでなく、所有させてあげると思ってる。怠けるのが好き。ときおり気まぐれなまばたきをして、人間たちを魅了する。これって猫のこと? 宝石のこと? 猫と宝石は、どこか似ている。その昔、ケーリー・グラントが演じた宝石泥棒はキャットと名乗っていた。

そのせいで、というわけではないけれど。『不思議な国のアリス』に登場するチェシャー・キャット。不気味な笑顔が特徴の不思議な猫で、笑った形の口だけ残して、あとは消えてしまうのが、彼の得意技。その消えるまえの一瞬の瞳の輝きが、猫目石を思わせると、ある詩人にささやかれたことがある。

動物の名をもつ宝石、猫目石には、一種、野性的な妖しさがただよっている。眠ったような半透明の蜂蜜色を、瞳孔にも似た、ひとはけの光が横切り、角度によってちらちらと動く。こっちを見つめて、す早くウインクでもしたかのように。

西洋の言い伝えでは、外面的な美しさと力を与えてくれる石。起伏の激しい人生をひきよせると言われた。また、東洋では、怠惰な人が身につけると、いっそう怠惰になるといましめられた。そんなキャッツ・アイが登場する映画が1962年に日本で封切られた『瘋癲老人日記』なのである。
<続きは、PDFファイルをご覧ください>

瘋癲老人日記「猫目石と女の関係」adobe_pdf_file_icon_24x24

岩田裕子