風と共に去りぬ

シネマの宝石学
―洗練された大人のおとぎ話12

宝石は美しい武器

昔、見た映画。取り立てて、思い出すこともないのだけど、それは血肉に溶け込んでしまっているからで、無意識にいつも反芻している。生き方にまで、染みとおってしまっている。岐路にたつとき、ふっと思い浮かぶ。映画は数限りなく見たけれど、そんな映画はごく一握りしか存在しない。私にとって「風と共に去りぬ」はそんな映画のひとつなのだ。

わたしだけではない。アメリカのあらゆる年代の女性にインタビューした『わが青春のスカーレット』(ヘレン・テーラー著)という書籍を読んでみても、日本の大学が集めたこの映画に関するアンケートを見てみても、スカーレットの生き方に大
きく影響を受けたという女性は非常に多い。

私がこの映画を始めて見たのは、スカーレットより年下であった中学生の夏休みだった。自分に正直なスカーレットに鮮烈な印象を受けたものだ。しっかり大人になった今、改めて見ても、明らかに面白い。昨日見た現在の話題作より100倍も面白い。この映画が作られたのは、1939年だった。ナチス・ドイツがポーランドに侵攻し、第二次世界大戦が、勃発した年である。まだ映画のテーマである南北戦争の生き残り兵士が生存しており、試写会に招待されたというエピソードもある。

セルズニックは、小説がベストセラーになる前にすでに映画化を決め、当代一の脚本家、シドニー・ハワードに脚色を依頼した。河出書房刊で3巻にもわたるこの膨大な作品を、原作に忠実に再現するには、まさに執念ともいえる不屈の精神が必要だった。

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宝石は美しい武器「風と共に去りぬ」adobe_pdf_file_icon_24x24

岩田裕子