甘い生活

シネマの宝石学―洗練された大人のおとぎ話30

ローマの魔法

「甘い生活」

フェリーニの分岐点となったこの映画は、当初、「ヴェネト通り」というタイトルにしようと制作側は考えていた。主人公のマルチェロは、ローマのゴシップ記者で、ヴェネト通りのカフェにたむろし、有名人を見つけて追いかけたり、仕事仲間との連絡や友人との待ち合わせに使ったりしていた。ヴェネト通りは、舗道がひろく、そこにでているオープンカフェは、世界中で一番おしゃれと言われる。

「甘い生活」が撮影された50年代は、世界各国からきた有名人で賑わっていた。オードリーに、ゲーリー・クーパー、オーソン・ウェルズ、ジャン・コクトー、そしてシャネル。連れが前日、予約したのが、ヴェネト通りのホテル・マジェスティックだった。このときだけ、たまたま少しお手頃だったという。あとで知ったら、マイケル・ジャクソンも泊まったことがある、ヴェネト通りの名物のひとつだった。

通りに沿って、ゆるくカーブを描くクラシックな黄色の建物で、内装は、薔薇の深紅をテーマカラーにしていた。廊下には、金色のドアが続き、そこに深紅の照明が点々とともる。さながら、ピジョンブラッドのルビーのようだ。客室の窓を彩るカーテンも、同じ赤。こんな綺麗な赤い布を、私は生まれて初めて見た。すごく上品で、だけども気取らない赤。可愛いけれど、大人の赤だ。

朝食は、階上のバルコニーでとる。四角いパラソルの下のテーブル。その向こうには、ヴェネト通りの木々がみえる。爽やかな風。ソフィア・ローレンがバルコニーで恋をする。そんな映画をみたようにも思う。

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岩田裕子